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讀賣新聞より

大林宣彦監督の「時をかける少女」など
多くの映画の舞台になった広島県尾道市。
観光地としてにぎわう一方で高齢化が進み
山がちな市内には古い空き家も目立つ。

大正時代の古民家を改修したカフェ「尾道イーハトーヴ 梟の館」は
瀬戸内海を見渡す高台の一角にある。
経営する安達忍さん(49)は「畳を板に替える程度しか改装していない。
民家が美しく朽ちていくことを手伝う感覚です」と語る。
あえてレトロな雰囲気を残したカフェは、多くの観光客らでにぎわう。

愛知県出身の安達さんは大林監督作品に魅せられ
大学生の頃から尾道に通った。
愛知県内で働いていたが、脱サラして2003年に尾道へ移住。
現在はカフェ近くの古民家で、家族と暮らす。
「尾道で結婚し、仲間もできた。古い建物がある美しい景観を守っていきたい」
と話す。

古民家が取り壊されれば景観が維持できないと危機感を抱いた
地元出身の豊田雅子さんは、
古民家への移住を進める「尾道空き家再生プロジェクト」を07年に設立。
これまでに約100戸の再生に取り組んだ。

大手旅行会社で働いていた豊田さんは
「欧州のように歴史ある景観の町づくりがしたい」と夢を描く。

12年には、戦前に建てられた住居兼店舗を改装して
ゲストハウス「あなごのねどこ」を開業した。

併設のカフェで働く札幌市出身の野上亜水さん(39)は
「尾道に住んで5年以上たつが、外国人や若い人が増えた」と話す。

古民家の明確な定義はないが、一般的に築後50年以上たった建物とされている。
日本家屋の魅力が見直された昨今、都市部でも人気を集めている。
会社経営者の赤塚妙子さん(42)は
戦前に建てられたとみられる東京都三鷹市の古民家に、
3年前から住む。広い縁側と大きな窓、窓に連なる庭の景色。
「管理は大変だが、現代建築にはないデザインと雰囲気がある」と、満足げだ。

ビジネス面からも注目されている。日本政策投資銀行は15年
空き家の古民家は全国に約21万戸あり
修繕やリフォームの潜在市場が約1・8兆円に上ると試算した。

利根川水運の要衝として栄え
江戸情緒が残る商家の街並みが残る千葉県香取市の佐原地区では昨年
幕末に建てられた商家や蔵を改装した
「佐原商家町ホテルNIPPONIA(ニッポニア)」がオープンした。

運営するバリューマネジメント(大阪市)は
関西を中心に古民家や歴史的建造物を宿泊施設として活用している。
同社は「古い建物をビジネスにいかすことが景観保護にもつながる」としている。

一般社団法人「全国古民家再生協会」顧問の井上幸一さんは
「伝統的な工法で建てられた木造住宅は貴重な資産。
過疎地域で壊すしかないと思われている建物でも、再生可能なことがある。
当協会などに鑑定の相談をしてほしい」と呼びかけている。

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